efdc1bb2
以前「イラレ(Adobe Illustrator)ってどんなソフト?」の記事用に描いたイラスト。イラレの機能は主にこの3つですが、CS時代になってから(擬似)3D機能が充実しました。ですが現場ではあまり積極的に使われてはいないようなので、覚えるのは最後でいいでしょう。




 多くの人がデザイナーやイラストレーターに憧れてイラレ(Adobe Illustrator)操作のスキルを身につけようとスクールやセミナーに通ったり、ネット講座で勉強したり、ハウツー本を購入したりしていると思います。個人的にはイラレ程度なら独学でも習得できると思いますが、それは私がすでにアナログ時代からのデザイナーだったというアドバンテージがあったからで、今現在の初心者の置かれた環境や、状況を知らない以上はそう簡単には言えないのかも知れません。

 どちらにしても、イラレを操作する最低限のスキルは必要です。それを箇条書きにすれば以下のようになるでしょう。

(1)ペンツールで自在にパスを引く技術

(2)色を自在に指定できる技術

(3)図形を描き、それを自在に配置・加工できる技術

(4)テキストを打ち込み、それを自在に配置・加工できる技術

(5)写真やイラスト、図版などを自在に配置・加工できる技術

(6)最低限の印刷・WEBの知識

以上のスキルを取得して、やっとスタートラインに立つ資格を得るわけですが、この時点でのレベルを料理に例えると「主婦が日常行う料理ができるようになっただけ」という段階です。主婦を「シェフ」と呼ばないのと同じように、このレベルではデザイナーでもなければ、イラストレーターでもありません

 では、シェフ、つまりデザイナーやイラストレーターと呼ばれるようになるには何が必要かと言えば、それは「創作する力」です。シェフがメニューを「創作」しているように、デザイナーもイラストレーターも作品を「創作」できなければなりません。それには

(A)創造力

(B)構成力

(C)色彩感覚

(D)バランス感覚(デッサン力)

(E)描写力

が必要になります。それは前述した(1)〜(6)の「イラレを操作する最低限のスキル」とは全く別のものです。

 いくらイラレを使いこなす高い技術があったとしても、創作能力がなければデザイナーにもイラストレーターにもなれません。高い技術を有するもの=技術者=「オペレーター」であって、デザイナーやイラストレーターなどの「クリエーター」ではないのです。調理器具を使うにしろ、イラレを使うにしろ、おいしい料理やセンス溢れるデザイン、萌えるイラストは創作能力の高さによって決まります。道具を使う技術の高さでは決まりません。技術を極めるのも悪くはないですが、それに創作能力が伴ってなければ結局誰にも評価されないのです。シェフも、デザイナーも、イラストレーターも「できあがったものが全て」です。どんな道具を、どのように、どんな技術を使ったかは問題ではないのです。

 イラレ初心者の方にとってみても、上記の(1)〜(6)は数ヶ月から数年でクリアできるでしょう。しかし(A)〜(E)は何十年単位です。ヘタをすると一生かかります(笑)。「創作」とはそれほどはかりしれない、奥の深い世界です。そしてその「創作能力」をお金に変える仕事がシェフであり、デザイナーであり、イラストレーターです。イラレは単なる道具であって、使いこなすスキルに価値はありません。価値があるのはそれを使って「創作したもの」にあるのです。

 そんなわかりきったこと・・・と思われるかもしれませんが、この点を勘違いしている方は意外に多いのが現実です。私は「イラレを使えればデザイナーになれる」と考えている人に何人も会ってきましたし、実際に相談もされました。しかし彼ら・彼女らのほとんどは結局デザイナーにはなれませんでした。それは創作経験がまったくなかったからです。創作未経験者ほど創作スキルを軽んじる傾向があり、いざ自分でやってみるとあまりの難しさに閉口し、周りとのレベルの格差に愕然とし、そして結局は投げ出してしまうのです。ですので、デザイナーやイラストレーターになりたいのなら、子供の頃からなんらかの創作活動をしていないと「ほぼ不可能」でしょう。イラレやその他ソフトウェアを使いこなすスキルなど、後からどうにでもなります。そんなものに価値はないのです。

「まずは創作者であれ」

デザイナーやイラストレーターなどのクリエーターになりたいのであれば、人生のなるべく早い時期に、なるべく密度の濃い創作活動を、紙と鉛筆からでいいので始めてください。