DSC00786
高橋真琴氏の公式サイトはこちら




 高橋真琴氏の名前を知らなくても、1960〜70年代に幼少期を過ごされた方なら一度はその絵を見たことがあるかと思います。当時、多くの少女向けの文房具やグッズ、「なかよし」「マーガレット」などの少女漫画雑誌の表紙や、巻頭特集のイラストを手がけていたイラストレーター・画家です。私はひとつ上に姉がいますので、家の中にいくつか高橋真琴グッズがあったのを覚えています。中でも赤い水筒は強烈な印象として残っていて、なぜなら彼女は水筒を遠足でもないのに「学校に持って行く!」と駄々をこねていたからです。

 そんな高橋真琴氏の原画が見られというので、池袋の三省堂書店(旧リブロ)まで出かけてきました。展示にはライブペインティングのDVDが流されていましたので、それを見させていただいたのですが、驚いたのは輪郭線の描き方。下書きの輪郭線をベージュの水彩絵具でなぞり、その上を色鉛筆で輪郭線を引いていくという手法だそうです。先に輪郭線を描かないのは、輪郭線の色鉛筆が水彩絵具に溶けることにより、輪郭線が柔らかい、優しい印象になるからだそう。同時代の少女イラストレーターに比べて高橋氏の描く少女に優しく、柔らかい印象があるのはこの手法を用いていたからなのでしょう。

 私は仕事柄、アナログのイラストレーターの仕事ぶりは知っていますし、つぶさに見てきていましたが、この手法は初めて知りました。昔はこういったノウハウは企業秘密としておおっぴらにしなかったのですが、最近はアナログで描くイラストレーターも減ったためか、惜しげも無く披露してくれます。他には水彩絵具はパレット上で混ぜ合わせず、原液のまま使用するという手法を紹介していましたが、それは絵具は色を混ぜ合わせれば混ぜ合わせるほど色が濁るからです。減色混合ですね。絵具のチューブから出したままの原液を水に溶かし、画面(描いている絵)上で色を混ぜ合わせて色を作るというのは当時よく用いられていた方法ですが、当然失敗はできませんので、テスト用紙で色を確認してからの作業になります。当時のイラストレーターには「アンドゥ」などありませんからね。

 高橋氏は「消しゴムを均等にかけるのが一番神経を使う」とおっしゃっていましたが、紙(水彩紙?)にゴムかけすることによって紙面を荒らし、水彩絵具のなじみを良くするというのも当時よく用いられていた手法です。こういったアナログ画の「ノウハウの伝承」が行われているのか否かは、最近アナログ絵界隈の情報に疎いので良く知りませんが、アナログ絵師さん(もちろんデジタル絵師さんも)はこういった原画展には極力足を運ぶべきだと思います。ネット上の情報が全てではありませんし、むしろ原画の方が様々な有益な情報をもたらしてくれるでしょう。ネットの歴史なんてたかだか数十年です。それまでに蓄積されたアナログの情報量が圧倒的に多いのは言うまでもないことです。引きこもってネットに依存するのは、それだけ有益な情報を知りそびれていると思うべきでしょう。

 三省堂書店 池袋本店での開催は2018年11月13日までですが、全国を巡回していますので、お近くで開催された際は足を運んでみることをおすすめいたします。