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私が小学校6年生のときに描いた車の絵。空間認識能力があり背景を三次元で認識できているが、それを紙面に落とし込む能力に欠けていることがわかる。




 私は日常的に印刷会社やweb業者への入稿業務を行っています。その経験から「プロのイラストレーターを目指すなら最低限知っておかなかればならない知識」をコラムでご紹介したいと思います。今回はその5回目「空間認識能力とその役割について」です。

 空間認識能力(くうかんにんしきのうりょく)とは、物体の位置・方向・姿勢・大きさ・形状・間隔など、物体が三次元空間に占めている状態や関係を、すばやく正確に把握、認識する能力のこと。(wikipediaより)


 空間認識能力はよくスポーツ選手に必要な資質として名前が上がりますが、当然絵を描く際にも重要な能力です。絵の世界ではさらにこの空間認識を絵という二次元空間に再現・定着させる能力が必要になります。

 空間認識能力は鍛えることができると一般に言われているようですが、私はかなり先天的な能力ではないか、と思っています。実際、絵の下手な子供はいくら教えても下手なままです。空間認識能力がないので見た状況を三次元で捉えられないのです。だから本人は三次元のつもりで絵を描いても平面的な絵しか描けません。よく「陰が汚れにしか見えない」という絵を描く人がいますが、これはそれの典型例だと思います。

 それでも練習すればだんだんマシにはなってきます。でも空間認識能力がないので、やはりどこかおかしい絵になってしまいます。「描写力があり、丁寧には描かれているがどこかデッサンやバランスが狂った絵」というのは長年絵を描いてきた素人の画家に多いパターンです。画歴はやたら長いのにそういった絵を描く人はこの空間認識能力がない人だと言えるでしょう。

 つまり、この空間認識能力の有無はイラストレーターになるには絶対必須の条件になります。ですが、現実を見ればそんなに大きな問題でもなく、イラストレーターを夢見れるほどお絵描きが好きな子供ならこの能力が備わっているとみて間違いないでしょう。そうでなければお絵描きを好きになったりしませんから。

 それからのお絵かきの繰り返しは「空間認識能力を高める」訓練ではなく「紙の上いう二次元空間にそれを再現・定着させる」訓練だと思っています。空間認識能力を持っている人はその能力を成長することによって自然に高めることができます。書いたイラストを一定期間放置してから再度見直すとデッサンの狂いがわかりやすいのは「その間に成長して空間認識能力が自然に高まった」のだと思います。年をとれば成長が鈍りますので、空間認識能力の高まりも鈍くなってきます。ただ、お絵かきという訓練はこの能力の向上を刺戟する効果はあるかもしれません。

 だからこの「お絵描きが好き」という感覚は自我の確立とも深い関係があるのだと思います。年齢で言えば5〜10歳くらい、小学校低学年の頃に自己認識するパターンが多いようです。そしてそのまま中学・高校・大学と絵を描き続け、大人になってそれを職業とするというのが多くのイラストレーターが辿った道ではないでしょうか。

 余談ですが、大学生になって突然絵や写真始めるといった奇行に走る若者に度々会ってきました。私がプロのデザイナーだと知るやいなや「私に絵の才能があるかどうか私の作品を見てください!」と言うのです。最初のうちは真面目にアドバイスをしてあげたりもしていたのですが、その内ある心理に気づいてしまいました。

 要するに、小学生の頃から大学に入るまで勉強やスポーツを中心に生活が回るという王道の学園生活を過ごしてきた人が、大学生になって多種多様な個性と才能のある人たち(たいていは音楽や絵、写真などの芸術系)の存在を知り、それに触発されて自分も絵や写真を始めるというパターンです。つまり「ごく当たり前で一般的な人生を送ってきたけど、私にも別の個性や才能があるんじゃないか」と「ごく当たり前に」思ってしまうんですね(笑)。いうまでもなく、そんな才能やセンスのある人間ならもっと早い段階からそれを始めていますし、大学生くらいの年齢になると自己の表現を模索してもがき苦しみ、他人のアドバイスなどに聞く耳を持ったりしません。

 そんな葛藤や模索のある「絵の世界」に対し、ヘタクソなのに雰囲気だけそれっぽく描いた絵を示しつつ「私って絵の才能、ありますかね?」と訊いてくる大学生やその年代の若者に対して私がアドバイスできるのは「好きにすれば?」しかありません。きっと彼ら、彼女らの青春の1ページを彩るプリクラのスタンプ程度にはなるんじゃないでしょうか。

●まとめ

(1)空間認識能力は先天的な能力で、これが備わっていないとイラストレーターにはなれない。
(2)だがたいていの場合、子供の頃の「お絵描きが好き」という自己認識の時点でこの能力が備わっているとみていい。
(3)鍛えるべきなのは「空間認識を紙の上という二次元に再現・定着させる能力」である。
(4)空間認識能力は成長とともに自然に発達する。
(5)お絵描きという訓練は上記の発達を促す効果はあるかもしれない。
(6)大学デビューの自称アーティストの相手はもうしたくありません。

以上です。

2016年9月11日追記:この空間認識能力について説明不足だと感じましたので、こちらであらためて記事にしました。


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