藤崎詩織-01
こうして見ると、完全に現在の萌え絵と同じですね。




 1990年代に入って、ゲームの世界にそれまで影も形もなかった分野が突然現れます。そう「恋愛シミュレーションゲーム」です。それまでのPC用ゲームといえば、シューティングゲーム、ロールプレイングゲーム、アドベンチャーゲーム、シミュレーションゲームなどがあり、それぞれSF、ファンタジー、ミステリー、戦争をその世界観としていました。そこにアドベンチャーゲームのミステリー要素を恋愛要素に置き換えた『ときめきメモリアル』が登場します。明らかに少女漫画に影響されたそのキャラデザインに多数の男たちが魅了され、このゲームは大ヒット、社会現象とまで言われるようになりました。

 では、どうしてアニメや漫画、ゲームといった「男の世界」に少女漫画的絵柄が模倣されるようになったのでしょう? それは『タッチ』に代表される1980年代のラブコメの隆盛が背景にあると思います。それまで男性中心のストーリーの単なる添え物でしたなかった女性キャラが、このラブコメによって一気に主役に踊り出ました。そうなるとその女性キャラのデザインは男性が見ても愛らしく、可愛らしいものでなければなりません。そこで当時の漫画家やイラストレーター、キャラデザイナーたちが参考にしたのが少女漫画です。『さすがの猿飛』『夢戦士ウィングマン』『気まぐれオレンジロード』『ザ・かぼちゃワイン』『ストップ!!ひばりくん』など、どれも可愛らしい絵柄で愛らしい魅力を振りまくヒロインたちに読者は一喜一憂。人気作は次々にアニメ化され、どれも大ヒットを記録しました。

 このラブコメの隆盛によって「萌え」(当時はこの言葉ありませんでしたが)が商売になると多くの漫画家やアニメ製作者やゲーム製作者が気づきます。そしてそれを決定付けたのが『ときメモ』です。なぜなら『ときメモ』には原作に当たる漫画もアニメもなかったにもかかわらず、そのキャラクターデザインだけで大ヒットしたのですから。

 ラブコメの隆盛が少年漫画やアニメの女性キャラに少女漫画の意匠を取り込ませる役割を果たし、それがついにキャラデザインの魅力だけで『ときメモ』というヒット作が生まれるまでに至った・・・。以前この記事で「萌えの源流は少女漫画にある」と考察しましたが、では「萌え絵の元祖は?」と尋ねられれば私は迷わず「『ときメモ』の藤崎詩織」と答えます。wikiで示された典型的な萌え絵の雛形がこの藤崎詩織です。その後萌え絵は幼女化、猫耳、ツインテール、黒髪ロング、メイド、二頭身、三頭身など様々なバリエーションに拡大しましたが、この基本形だけは現在も大きくは変わっていないようです。

 ちなみに私はエロゲーはおろか、ギャルゲーも一度もしたことがありません。(過去に一度『ときメモ』のビデオパッケージのデザインの仕事はさせていただきましたが)私が典型的な萌え絵に萌えないのはそのあたりに理由があるのかもしれませんね。