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ライターが一つ記事を書くためには取材や資料集め、裏取りなど、それ相応の時間と労力が必要になる。それをせず、ネットの情報を集めてただつなぎ合わせるだけの人を「ライター」と呼んではいけない。(写真提供:pixabay




 私は日常的に印刷会社やweb業者への入稿業務を行っています。その経験から「プロのイラストレーターを目指すなら最低限知っておかなかればならない知識」をコラムでご紹介したいと思います。今回はその18回目「「プロの世界」と「プロを装いアマチュアを都合よく利用する世界」の違い」です。

 現在、ネット上でDeNAなどが運営するキュレーションサイトの無断転載および捏造とも言える記事の信頼性放棄が問題になり、喧々諤々の議論が行われているようですが、その問題の一つに記事を切り貼りするライターの存在があります。その「切り貼りライター」ですが、主婦や学生などプロのライターでない、いわば「ちょっと文章力のあるアマチュア」が大量に安価に採用され、その任に当たっていたようです。私はプロのグラフィックデザイナーですので、プロのライターとも、プロのイラストレーターともお付き合いがあります。ですので説明いたしますと、「プロ」と名乗る世界は以下のような業務の流れになっています。


クライアント
  ↓
広告代理店
  ↓
広告制作プロダクション
  ↓
制作スタッフ(プロのデザイナー、カメラマン、ライター、イラストレーターなど)



 これはごく一般的で大雑把な業務の流れを示したものに過ぎませんが、どの業務もこれと大きくは違わないと思います。この中で実作業は最下流の「制作スタッフ」で行われますが、この制作スタッフは会社に所属している場合もありますし、フリーランスで活動されている方も多いです。

 さて、問題になっているキュレーションサイトの業務が流れるルートを、記事を読んだ限りで同じように図式化してみますと、


キュレーションサイト運営事業部(実質クライアント)
  ↓
クライアントがクラウドソーシングサイトを利用
  ↓
ライター(主婦や学生などのアマチュアライター)



と、我々の業界でいう「クライアント直(ちょく)」であることがわかります。

 この「クライアント直」という業務形態ですが、広告代理店を通さないためにクライアントはコストを圧縮できるというメリットがあります。しかしその反面、広告の専門家が介在しないので、著作権などの法律や、モラルハザードに対して鈍感になる、というデメリットがあります。それでも制作者(この場合ライター)がプロの場合は専門知識も経験もありますので、「何が良くて何が問題か」という判断ができ、クライアントの無茶な要求に対してブレーキをかけることも、なぜそうなのかの説明することもできます。しかしどうやら今回の場合、その殆どがアマチュアだったために「全くのノーブレーキ状態で記事が無法地帯と化した」というのが実情のようです。

 一部の「プロ」の方々は危険を察知して、早々に逃げ出し難を逃れたようですが、そうなれば残るのは質の悪い素人ばかり。どうやらクライアントの方もコンプライアンス遵守の意識が最初からなかったようで、ならば早晩こうなってしかるべき問題です。上段のプロの世界でもたびたび著作権の問題は起こっているのです(オリンピックのエンブレム問題)。なのにコンプライアンス無視、素人ライターだらけのキュレーションサイトで問題が起こらないはずはありません。

 こういった「安い労働力であるアマチュアを使って質の悪いコンテンツを大量生産する」という手法はなにもキュレーションサイトばかりではありません。いわゆるソーシャルゲームに代表される「萌え絵業界」も同じ臭いがします。よくイラスト料の単価の安さが話題になりますが、下段のアマチュアに支払うギャラであれば、その額は正当なものであると言えるでしょう。

 逆に、上段のプロに支払うギャラであればそれは安すぎる単価であり、そんな金額で仕事を請け負うプロはいないでしょう。プロのギャラを受け取りたければ、上段の「プロの世界」に所属しているというが最低の条件になります。下段の世界は「プロの世界」ではありません。言うなれば、プロの(ような)仕事ができるという謳い文句で素人を集め、労働力を安くコキ使うために存在する「アマチュアを都合よく利用する世界」です。クライアントがクラウドソーシングサイトを利用したのはそのためです。

 さらに言えば、上段の「プロの世界の人」から見れば、下段の「プロを装ったアマチュア世界の人」は評価するに値しません。なぜなら求められる仕事(記事/イラスト)の品質が全くが違うからです。記事に例えて言うならば、書店売り専門誌の丁寧な取材と情報収集、情報の裏取りがされた記事と、キュレーションサイトの切り貼りコピペ記事くらい違います。ですので、プロのイラストレーターになりたければ、どちらの世界に所属しなければならないか、説明するまでもないでしょう。

●まとめ

(1)昨今のキュレーションサイトの業務発注の構造的問題は、ソーシャルゲームなどの萌え業界でも同様であると考えられる。
(2)それはいわゆる「プロの世界」とは全く別の世界である。
(3)それは「プロを夢見るアマチュアを都合よく利用する世界」である。
(4)「プロの世界」の人は「プロを夢見るアマチュアを都合よく利用する世界」の人を全く評価していない。
(5)プロのイラストレーターになりたければ、どちらの世界に所属しなければならないか自明である。

以上です。


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