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クラウドソーシングサイトに登録しただけで仕事が来る、などとゆめゆめ思わないほうがいい。(写真提供:pixabay




 私は日常的に印刷会社やweb業者への入稿業務を行っています。その経験から「プロのイラストレーターを目指すなら最低限知っておかなかればならない知識」をコラムでご紹介したいと思います。今回はその21回目「「使い捨ての人」以下の「仕事のない人」。それがネットワーカーの現実」です。

 NHKの『クローズアップ現代+(プラス)』という番組で、ネット(クラウド)ワーカーについての特集『副業貧乏に内職地獄? ネット・ワーカー残酷物語』がオンエアされていたので見てみました。私は2010年にいくつかのクラウドドーシングサイトに登録し、今まで何度か仕事を受注したことがあります。そこでの経験を踏まえてこの「ネットワーカー」の実態についてお話したいと思います。

 まず、最初に定義の話からいたしますが、クロ現がせっかく「ネットワーカー」という言葉を使っているので、いわゆる「フリーランス」とどう違うかを説明します。

・フリーランス

 いわゆる個人事業主(法人化している場合もある)。個人で業務の受注、打ち合わせ、予算管理、制作、納品、経理事務の全てをこなす人。クライアントから業務を指名によって直接受注しているので、法人(会社)に発注するのと同額程度の報酬が期待できる。その代わり打ち合わせや立会いなど、外出の機会も当然あり、スケジュールがタイトだったり、報酬を値切られたりというデメリットも。通勤地獄や会社の人間関係に悩むことはなくなるが、クライアントの都合によって振り回されるので、「フリー」というほど自由ではない。フリーランスになるには最低でもその世界での5~10年の実績と実力、専門知識とスキル、高い品質の業務結果の提示、そして何よりも約束は必ず守るという信頼感・安心感を獲得する必要がある。

・ネットワーカー

 個人で業務を請け負う個人事業主であるというのはフリーランスと同じだが、業務の受注をクラウドソーシングサイトやビジネスマッチングサイトに頼っている人のことを指す。クライアントから業務を直接受注できず、サイトを介することになるので、多数の登録者と競合することになり、受注するだけでかなりの困難を伴う。しかも単価は安く、スケジュールも厳しく業務の質も悪い。その代わり高い専門性やスキルは必要でなく、打ち合わせなどの外出も不要で、すべてネット上で完結できるのはメリット。匿名で仕事ができるので、主婦の片手間やアルバイトなどの副業として気軽に始められる。

 以上になりますが、番組ではライターを例に取り上げていたので、ここでもライターを例に説明いたします。イラストレーターは事情は多少異なるかもしれませんが、供給過多という意味ではイラストレーターもライターも同じなので、根本は同じだと考えていただいて構いません。

・フリーランスのライター

 クライアントは広告代理店・出版社・編集プロダクションなどで、業務を直接受注する。取材、インタビューからテープ起こし、簡単な撮影、企画の立案やそれを実現できる実行力、他のライターへの業務の発注・管理など、代理店や出版社でそれなりに経験を積み、実績も人脈も持っている人。医療や不動産など、専門性が高い記事を書ける人はそれ相応のスキルを身につけている。取材や撮影、打ち合わせなど外出の機会も多いので、コミュニケーションスキルも必要。特に取材は「取材対象から必要な情報を訊き出す力」が必要になる。

・ネットワーカーのライター

 クラウドソーシングサイトやビジネスマッチングサイトで仕事を受注する。こういったサイトは登録に当たって審査を行っていないのでスキルのないずぶの素人でも登録できる。逆に言えばこういったサイトで募集されている業務は「その程度のレベルの低い仕事」がほとんど。「仕事の質」は「報酬の額」に比例するので、当然単価は安くなるし、参入障壁も低いので同業者との競合が激しく、さらに単価は安くなる傾向にある。外出して人と会うこともなく、匿名で仕事ができ、ネット上で全て完結できてしまうのも単価が低い理由の一つ。

 以上のように「フリーランス」と「ネットワーカー」は似て非なるものだということが理解できるかと思います。ネットワーカーはクラウドソーシングサイトやビジネスマッチングサイトに登録さえすればなれますが、フリーランスになるにはそれ相応の経験と実績、専門知識と高いスキルが必要です。私個人のお話をすれば、フリーランスになるまで広告業界を10年間に渡って、数社の広告会社を渡り歩きました。当然ですが「プロ」であるフリーランスと「ほとんど素人」であるネットワーカーとで、受け取る報酬が同じであるはずはありません。また、たとえどんなに高いスキルと実力を持っていたとしても、ネットワーカーとしてでしか仕事が受注できないのなら、その人の真の実力はどうであれ、クライアントは「ほとんど素人」としてしか評価しません。

 クラウドソーシングサイトやネットワーカーは「その分野がちょっと得意な素人に、安価にその仕事を提供したり請け負ったりすること」で存在できているのです。そんな素人が「おこずかいを稼げる」と多数参加しているという現状は、昔で言うところの「シール貼りの内職の仕事」に群がる主婦とたいして変わりありません。内職は内職でしかありませんし、本職並みの報酬をもらえるはずもありません。そこを勘違いするから話がややこしくなるわけで、「ネットワーカー」などというオシャレな横文字肩書きはやめて「ネット内職」と正しく理解すべきでしょう。そうすれば番組後半で語られたネットワーカーの待遇改善の動きが、「シール貼りの内職をしているオバチャンが労働者の権利云々を語っているようなもの」という滑稽さが理解できるかと思います。

●まとめ

(1)フリーランスとネットワーカーの違いは以上の通り
(2)「ネットワーカー」とは「ネットで受注し納品する内職」、「クラウドソーシングサイト」とは「ネットで内職を発注するサイト」と正しく認識すべき
(3)内職は「副業」「こずかい稼ぎ」でしかないので、そもそも「働く人の権利云々」という主張は的外れ
(4)ネットワーカーは登録さえすれば誰でもなれるので、クライアント側は「素人に毛が生えた程度」としか認識しておらず、発注する業務も例えるなら「シール貼り程度」の簡単なものがほとんど
(5)その「シール貼り程度の仕事」も発注量より圧倒的にネットワーカーの数の方が多いので、それさえありつけずに仕事にあぶれているネットワーカーが大量に存在するのが現実
(6)結論は、そもそも副業であるネットワーカーを本業にしたいと考えること自体が間違いであり、フリーランスとして独立したいのなら、クラウドソーシングサイトに業務の受注を頼っている時点で将来はないと判断すべき

 結局のところ、大昔から存在する「内職」を、「ネットで発注と納品ができる形」に変えたものが「ネットワーカー」だということです。それを仲介する会社が「クラウドソーシングサイト」や「ビジネスマッチングサイト」であるという正しい認識を持てば、現状で何も問題はありません。ネットワーカーの単なる勘違い(夢見る夢子)から始まった今回の問題、著作権法違反などの既存の法律違反以外で、法整備やルールの策定は特に必要ないでしょう。ネットワーカーが変な勘違いをやめればいいだけの話ですので。


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