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女性の営業さんも多くなったとはいえ、広告業界はまだまだ男性社会。その中でもイラストレーターは女性比が高く、立場も弱いので狙われやすい。気をつけて。(写真提供:FreeBackPhoto




 これは親友であり、同じ広告業界で頑張ってきた戦友でもあるIさんの話です。

 私とIさん(同い年の女性)はとあるデザイン事務所で知り合いました。私はその事務所のデザイナー、Iさんはその事務所に非常勤で働いていたフリーのデザイナー兼イラストレーターでした。小さい事務所だったのでスタッフも少なく、みんな和気藹々と賑やかに、しかしとても忙しく仕事をこなす毎日でした。打ち上げなどメンバー全員で飲みにいくことも多く、恋バナやヨタバナでいつも盛り上がっていましたが、その中でも特に私はIさんと気が合いました。二人は趣味も性格も正反対なのですが、お互いに持っていないものを補完し合う関係とでもいうか、性格があまりにも違うため、かえって素直に自分をさらけ出せたのでしょう。仕事の悩みから恋の悩みまで、なんでも語り合う仲でした。Iさんは非常に明るく、友人も多く、社交的で裏表もない、誰にでも好かれる女性でした。しかし、その性格が災いし、本人が望んでもいないトラブルによく巻き込まれていたのです。すなわち今でいう「ストーカー」や「パワハラ」被害です。

 フリーランスのデザイナー兼イラストレーターという立場の彼女は、名刺に住所から電話番号まで、すべての個人情報が載っていました。それを「営業」と称して代理店やクライアント、関連各会社に配りまくっていたのです。当時(ネットのない頃)は今ほど個人情報に神経質ではない時代だったので、あまり危険性は顧みられず、私も「配る相手には気をつけろよ」と注意を促す程度でした。しかし、私が知っているだけでも

・某広告代理店の営業マンがストーカーに変貌、彼女のマンション前での待ち伏せはおろか、実家まで探し当てる事態に。

・仕事を通じて知り合った画家(自称?)に誕生日のディナーを無理やりセッティングされた挙句、肖像画(おそらく隠し撮りした写真を元に描いたもの)を強引にプレゼントされた。

・自宅兼事務所のマンションに置いてあったコピー機のメンテナンスマンにしつこく口説かれた。

というトラブルを抱えていました。ほかにも小さなトラブルは数知れず、とにかくIさんの周辺は常に正体不明の男たちで溢れてかえっていたのです。本人は「私みたいなブスのどこがいいんだか全然わからん!」と言っていましたが、誰にでも分け隔てなく接するその性格が、恋愛免疫のない男を狂わせているのは明白でした。しかし本人はどこまでも無自覚(本人は気をつけてるというのですが、私から見るとかなりザル)なまま。仕方がないので私は口すっぱく注意を繰り返すしかありませんでした。

 私がこの記事で「女性は名刺に住所を載せないという選択肢もある」としているのは実はこの経験があったからです。現在はこの頃よりもさらに状況は深刻になっています。ミュージシャンをしていた女子大生がストーカーに刺されて生死の境をさまよった事件は記憶に新しいところです。電通の女子新入社員の自殺という痛ましい事件もありました。あまり言いたくはありませんが、この業界は今でもセクハラ、パワハラは日常茶飯事です。女性イラストレーターやイラストレーターを目指している女性の方に進言します。個人情報の秘匿堅持と、仕事がらみの甘言にはくれぐれも注意してください。

 ところで、そんなIさんも家庭の事情から東京を離れて地元で結婚し、芸術系専門学校の講師をしつつ(生徒にもモテていましたが「あの頃に比べれば可愛いものよぉ」と余裕であしらっておりました。笑)、現在は二人の子持ちです。最近彼女は大病を患って手術をし、命の危険を乗り越えて生きています。今ではごくたまにメールで連絡をとりあう程度ですが、2年ほど前に会ったときはその容姿の変貌ぶりにショックを受けてしまいました。完治することのない病気ですが、生き延びて欲しいと親友であり戦友である(恋人関係にはなりませんでしたので)私は切に、切に願っています。