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昼間でも薄暗い地下通路にある『銀座ギャラリー』。そのうち再開発の手が入るでしょうけど、現状では小学生が行く場所ではないですね。

 東京・銀座の丸ノ内線銀座駅から、日比谷線の日比谷駅までの地下通路に「銀座ギャラリー」という無料で閲覧できるギャラリーがあります。ギャラリーといっても地下通路の両側に絵画などの展示スペースが設けられているだけで、しかも日中でも薄暗いという、おおよそ銀座らしくない雰囲気の悪い場所です。仕事柄銀座に出向くことが多く、この通路は雨に濡れなくて済むのでたまに利用するのですが、最近ここに展示されている小中学生が描いた絵で、明らかにトレースしたものがいくつか含まれていることに気がつきました。

 トレースの是非については様々な意見があると思いますが、私個人としては「著作権や肖像権、商標権を侵害しなければ問題ない」という立場です。私自身も自分で撮った写真や、トレースが許可されている画像をトレースして背景や小物に使用していたりしています。しかし、公共団体や企業が公募し、金賞・銀賞など優劣を評価するコンテストでトレースを許容しているのは問題ではないか?と思いました。しかも優劣に敏感に反応しがちな小中学生を対象にするならなおさらです。

 「絵を描く」という行為には、主に二つの技術が必要とされています。それは「デッサン力」と「描写力」です。その内の「デッサン力」を大幅に省力化できる「トレース」という行為が、小学生が絵の優劣を競うコンテストで容認されているという事実は、どうも納得できません。例えば、算数のテストで電卓の使用を許容しているようなものです。当然電卓未使用者より、電卓使用者の方が有利になりますが、電卓を使用してしまえば、算数という学問の理解は電卓を使用しない人に比べ、著しく劣ってしまうでしょう。同様に、絵画制作が観察力や集中力を養うためという教育であるとするならば、トレースをしてしまえばその意味は失われてしまいます。それは「教育の一環としての絵画コンテスト」としてふさわしいと言えるのでしょうか?

 それに、トレース元の画像に著作権侵害の疑念もつきまといます。ネットで拾った画像を無許可でトレースし、コントストに応募した結果、公共の場所に展示されてしまえば、その絵に著作権侵害の可能性が発生します。もちろん自分自身で(もしくは親が)撮影した画像を使用すれば問題はありませんが、審査する側は元画像の著作権の帰属を調べる方法はありませんので、作者の自己申告(良心)に頼ることになります。であれば、そういったグレーゾーンを排除するためにも一律「トレース不可」にするべきではないでしょうか。

 小学生低学年が「レンズの歪曲収差まで再現した(笑)」絵を見たところで、何の感慨も湧きません。逆に、いたいけな子供たちに「トレース」という入れ知恵をした大人たちを哀れに思うだけです。大人はバレないと思っているかも知れませんが、見る人が見れば一発でバレます。「禁止されていないので問題ない」と開き直るのは簡単ですが、子供の本名を晒されてまで(展示されてしまえば本名はおろか学校名まで晒されてしまいます)、「トレース絵www」と後ろ指を指されても構わない、というのならご自由にどうぞ、というしかありませんね。