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若い才能が次から次へと溢れ出している現在、たとえプロのイラストレーターになれたとしても、それは「長い人生のほんの一時期」という人がほとんど。生涯をイラストレーターとして全うできるのはほんの一握り。プロを目指し、プロを名乗るならその厳しい現実をよく認識してから臨むべきですね。(写真提供:FreeBackPhoto




 私は日常的に印刷会社やweb業者への入稿業務を行っています。その経験から「プロのイラストレーターを目指すなら最低限知っておかなかればならない知識」をコラムでご紹介したいと思います。今回はその29回目「イラスト制作費の適正価格について」です。

 まずはこのNAVERまとめのご一読を。

ネットで特技がお金に!?イラストを安価で請け負う主婦が紹介されイラストレーターがザワつく #あさイチ

 別に今に始まった話ではないですが、最近イラストの適正価格についてネット上で話題になる機会が多くなってきていると感じます。基本的にイラストの価格はあってないようなもので、そのほとんどが「言い値」なのは昔も今も同じです。とは言っても、業界標準価格というのはなんとなく存在していて、それについては以前ここで記事にしたのですが、改めて料金表をここで再掲しておきます。ただしこれは「適正価格」ではなく、単なる「標準的な相場の一例(しかも私感を多分に含む)」です。ギャラ交渉の根拠にはなりませんのでその点はご注意ください。


(1)カット(文章中やレイアウトの空白に配置される小さいイラスト)…3,000〜5,000円前後
(2)大きめのカット(そのページの1/3から半分を埋める程度)…10,000〜20,000円前後
(3)ページのメインイラスト(ページ全面やほぼ埋める大きさ)…20,000〜50,000円前後
(4)表紙・ポスターなどのその企画のメインビジュアル…50,000〜100,000円
(5)その企画の成否を左右する重要なキービジュアル…200,000〜500,000円


※上記は「プロ(専業)イラストレーター」を対象にしたギャランティです。
※名前で仕事を受注するいわゆる「作家イラストレーター」は全く別の料金体系(最低10万円レベル)です。
※スマホゲームやSNS向けなどのイラスト(いわゆる萌え系)は仕事として請け負っていないので分かりかねますが、「かなり安い」そうです。


 言い値であり、商取引である以上、時給換算には意味がありませんし、仕事にかけた時間分の「時給」が欲しいならイラストレーターなんかやめてコンビニでバイトすればいいだけの話ですが、一度「プロ」になってしまった方はどうやらそれはプライドが許さないようです。一方で有名イラストレーターは年中仕事に追われ「何年もまともに休む暇がない」と愚痴っています。そういう方は、主婦の片手間イラストレーターとは全く別次元のクオリティ、別次元の価格帯で仕事をしているので、こういう「素人主婦のイラスト料金価格破壊」という話題とは無縁でしょう。

 簡潔に言いますと、「イラストの価格はそのイラストレーターの実力・知名度を反映したもの」と考えて差し支えないでしょう。そのイラストレーターの描くイラストにどれほどの価値があるのかは、世の中が決めることです。主婦の片手間イラストが2500円なら2500円ですし、それに準じたイラストしか描けないのなら、たとえプロであろうとなかろうと、2500円の価値しかありません。上記の『あさイチ』で紹介された価格は適正だと思うし、この程度のイラストを「脅威」「商売がたき」「本職イラストの最低価格を下げて迷惑」と感じるなら、それはその人の実力がその程度(素人の主婦と同等)であることを示しているに過ぎません。逆に、その人しか描けない独自性の高いイラストや、ネームバリューで消費者を惹きつける力のあるイラストレーターにはクライアントはそれ相応のギャラを支払いますし、主婦の片手間イラストレーターとはレベルが違うので競合関係になりません。イラストレーターは人気を報酬に変える「人気商売」です。もちろん実力も知名度も人気のうちです。しかしなぜか現在の(素人に毛が生えた程度のプロの)イラスト界隈では「人気(実力)商売」の観点がすっかり抜け落ち、「時給換算してイラストの価格の参考に」という意見を臆面もなくつぶやきます。では店頭で「この商品は制作に5時間かかっているので5,000円になります」と説明されても納得して購入するのでしょうか? イラスト料は賃金ではなく報酬です。報酬はその商品の市場原理(需要と供給)で価格が決まります。「賃金(給料)」と「報酬」の違いくらい正しく認識すべきです。

 イラスト作成工程のデジタル化によってイラストレーターの裾野が広がると同時に、本来イラストレーターと名乗るレベルにないイラストレーターまで、プロとして(一時期なら)食べていける環境ができ上がってしまいました。でも、その拡大もどうやらここまでで、現在業界では選別・淘汰が粛々と進行中です。私の周りにもイラストレーターを廃業してしまった人は数多く存在します。その方々は主婦の片手間レベルではなく「実力も経験もプロとしてのレベルに十分達していた」人たちです。しかし、その人たちでさえハウツー本のカットイラストか、雑誌やムックの表紙を飾るレベル「以上」にはなれずに消えてしまいました。つまり「雑誌の表紙を飾った程度」「ハウツー本のイラストを一冊まるまる担当した程度」でイラストレーターをずっと続けられるほど、現実は甘くないのです。

 上記のまとめに登場する一部の「考えの甘い(自称プロの)イラストレーター」を見るにつけ、業務を発注する側としてはいつも辟易してしまいます。「素人が参入して価格が下落し、プロの生活が成り立たなくなる」と語る「プロ」とは、本来プロレベルでない人たちです。プロレベルであるイラストレーターでさえ廃業している時代です。それなのにさらなるレベルアップの努力をするでもなく、時代の変化に呼応し新たなスキルを身につけるでもなく、ただ漫然と過去〜現在の成功体験(イラストで食べていけている)にすがりつき、挙げ句の果てにギャラだけは高望み。自分の実力を棚に上げてブラックだの価格破壊だのと愚痴ツイート・・・。お寒い限りです。

 そう言う「お寒い方々」向けにイラストを発注する側の現実をお教えしましょう。発注側は「誰でも描けそうな簡単なイラスト」から「その人にしか描けない独自性の高いイラスト」まで、クライアントが求めるイラストのクオリティよってイラストレーターを格付けしています。当然前者のギャラは安く、後者は高くなります。実は打ち合わせの席上で「有名イラストレーターさんを使うのなら、それ相応の予算が要りますよ」「ご要望のイラストは専門性が高く、描ける人が少ないので高くなりますよ」とクライアントとあらかじめギャラのすり合わせをしているのです。クライアントが「それでもいいからその方に発注したい」「高くてもかまわないのでここはイラストが欲しい」となるからそれ相応のギャランティが支払われるのです。それ以外の「誰でも描けそうな簡単なイラスト」ではそんな話はしません。「この程度なら描ける人はゴマンといるでしょ?」「だったらギャラはこの程度で十分でしょ?」と「その他大勢」扱いなのです。「代わりはいくらでもいる」のです。このように仕事のたびにイラストレーターは「格付け」されていくのです。

 要するにこんなくだらない話題で愚痴っているイラストレーターたちは、間違いなく「誰でも描けそうな簡単なイラスト」の格付け、ということです。それが嫌なら「その人にしか描けない独自性の高いイラスト」の格付けになるべく、惜しみない努力をするべきです。そうした上でその実力が認められれば時給以上のギャラを簡単に手にできるでしょうし、主婦の片手間イラストに脅威を感じることもなくなるでしょう。「今現在努力しているんだけどとても無理・・・」というのなら、残念ながら才能がないのでしょう。諦めてコンビニでバイトでもなんでもしてください。これが業界の「現実」であり、「常識」です。

 以上です。


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