ハルヒ
あの頃の女子特有の訳のわからない強引さって一体なんなんでしょうね? あとネットワークの広がりの速さとか。そんなに人の噂話に必死にならなくてもいいと思うんだけど・・・。




 私には一つ上に姉がいるのですが、その姉は今でいうヲタク、つまり腐女子(小説創作系)です。私はイラストを描いていることは当然家族には内緒にしていたのですが、いつのまにか姉にはバレていて、自分のオリジナルSF小説のメカデザインなどの手伝いを強制的にさせられていました(泣)。進学した高校も同じだったのですが、生徒会役員をしていた姉は学校内での顔が広く、女子生徒にも、そして先生にも信頼されていました。当然部活動でも部長を任命されていて、つまるところ姉は同学年だけでなく、学年をまたぎ、先生をも巻き込んだ幅広い人脈、つまり「校内女子スパイ網」を持っていたのです。

 そんな学校に身を置いていた私が、姉の「校内女子スパイ網」の恐ろしさを身をもって体験する事件が起こります。ある日の放課後、同じクラスの女子から「隣のクラスの女子が放課後教室に来てほしいと言ってるよ」という呼び出しを受けました。私は内心「これは告白か?」とワクワクしながら彼女が待つ教室に向かいました。シチュエーションとしては『ハルヒ』で朝倉涼子に呼び出されたキョンのシーンをイメージしていただければ近いでしょう。するとそこに待っていたのはとっても地味な女子二人組でした。私ががっかりしていると、おもむろに彼女たちがこうのたまったのです。

「実は今、SFマンガを描いているんだけど、メカがどうしても描けないんです」

「そのことを先輩に相談したら、ウチの弟が描けるよ、と教えてくれたんです」

「お願いです、どうしても文化祭に間に合わせたいので協力してください!!」


 私は内心、「俺は竹宮恵子『地球(テラ)へ・・・』のひおあきらか!」とツッコミつつ、ここまで懇願されては無下に断るわけにもいかず、「下書きだけ」「俺の名前は出さない」を条件に手伝ってあげることにしました(当時の私の画力はこちらをどうぞ)。それと同時に、姉の「校内女子スパイ網」の恐ろしさをヒシヒシと感じていました。つまり、この事件は姉と面識がある女子がそこらじゅうにいるということを示していて、なおかつその子たちが同じクラスや同じ学年の女子にそのことを吹聴すれば、それだけ私を監視する目が増えるということになります。そうです、私の高校生活は旧ソ連のKGBも真っ青の、姉による「監視社会」にどっぷりとハマってしまっていたのです。

 当然姉はその子達の「弟さんに手伝っていただけることになりました!」という報告を聞いていたはずです。しかし姉はそのことには一言も触れず、私に何も教えてくれませんでした。要するに「スパイ網の手の内は見せない」ということなんでしょう。それからの私の高校生活は、見えない姉の「校内女子スパイ網」を意識せざるを得なくなり、クラスでは目立つ言動を控え、存在感をなるべく消すように心がけていました。唯一、スパイ網が及んでいない美術部だけが私の安息の地だったのです。

**********

 それから10年以上過ぎたある日、仲の良いいとこが結婚しました。お相手は偶然にも私と同じ高校の出身だということで、あいさつがてら新居にお邪魔し、昔話や雑談に興じていたのですが、突然そのお相手の新妻が一言こう言い放ちました。

「岩沙くんは私のこと知らないと思うけど、私は岩沙くんのこと知ってたよ!(ニコッ」

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

(なななななななにを知ってるんだよおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!)


 姉貴よ、

「あなたはとんでもないものを盗んでいきました」

「それは私の〈青春〉です・・・」


おしまい。