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良い餌場には鳥が群がるが如く、制作のデジタル化とインターネットはプロとアマの障壁を限りなく低くしてしまいました。もちろんそれに負けているようでは真のプロとは言えませんが、そのプロの間でも生存競争は苛烈を極めるばかりです。(写真提供:FreeBackPhoto




 「レッドオーシャン」「ブルーオーシャン」という経営理論用語をご存知でしょうか?

・レッドオーシャン…赤い海、血で血を洗う競争の激しい市場

・ブルーオーシャン…青い海、競合相手のいない市場

という意味ですが、以前「イラストレーターの供給過剰を招いた「デジタル化」の功罪」の記事で書いた通り、かつてのイラストの市場はアナログ(アクリル絵具やイラストボード、エアブラシなど各種専用画材)制作による高コストで高度な専門分野であり、仕事の受注も業界関係者に限られる参入障壁の高い「ブルーオーシャン」(もちろんその中で人気を競い合う厳しい競争社会ではありましたが)でした。しかしデジタル化による制作作業の簡易化、ローコスト化、さらにインターネット上で仕事の受注が可能になるという市場のオープン化によって新規参入者が激増、一気に「レッドオーシャン」化してしまいました。

 特に需要が多く、描き手も多い一般的な商用イラスト(広告や書籍・雑誌に使用されるイラスト)の分野では競争が激しく、すでに経験豊かなプロでさえ市場からの敗退を余儀なくされています。一部のプロを名乗るイラストレーターはこの現実を直視せず、アマチュアを含む新規参入者や、デジタル化によるイラスト大量生産・大量消費時代への批判を繰り返しているようですが、そんなことを言っている場合ではないほどイラストの市場は真っ赤に染め上がっているのです。

 今後イラストレーターが生き残るためには、この経営理論に従うなら「ブルーオーシャン」を目指すしかありません。では一体何が「ブルーオーシャン」なのかは、それぞれが導き出さなければならない結論ですが、一般的に言われていることは

(1)効率化

(2)高付加価値化

(3)多角化


ということがヒントになるでしょう。

 まず(1)ですが、釣り人が群がるレッドオーシャンに釣り糸を垂らしていても、釣果は期待できません。効率よく業務を受注したければブルーオーシャンに移動するしかないのですが、それは「業務の流れのより上流」および「より大きな放流者の近く」ということになると思います。つまり孫請けより直受け、中小より大手、ということです。具体的に言えば「レッドオーシャン=クラウドソーシングサイト」「ブルーオーシャン=大手広告代理店や大手出版社からの直請け」ですね。

 次に(2)ですが、現在は「より高いバリュー(価値)」が求められている時代です。ここでいる「バリュー」とは「ネームバリュー(人気や知名度)」「高度な技術(画力)・スキル(3DCGやアニメーション)」「独自性」など、「他者互換の効かないその人独自の高度な付加価値」という意味です。

 (3)はもうイラストだけに頼らない、ということですね。要するに「兼業」です。デザイナーやDTPオペレーター、アニメーター、漫画家、プログラマーなど、イラストに関連する業務はもちろんですが、株や不動産、飲食業などの店舗経営、家業の継承などイラストとは全く関係ない業務もありでしょう。ただ、イラスト講師やセミナー講師、イラストレーターを集めて会を主催したり、サイトを運営したりするなどは「食うための最後の手段」というイメージがあるので「ああ、この人はイラスト一本で食えないんだな」感が漂ってしまい、発注者が業務の発注を忌避する可能性が高くなるので注意が必要です。

 はっきり言って、生涯を現役の専業イラストレーターで終えられるのは一部のレジェンドクラスだけで、兼業イラストレーターとして収入の一部をイラストまかなえればまだいい方、そのほとんど、つまり90%以上は廃業→転職の道を歩みます。女性なら結婚→引退という選択肢がありますが、男性なら死活問題です。「昔イラストレーター、今タクシー運転手」という末路など、イラストとは無関係の分野への転職は決して珍しい話ではありません。これからイラストレーターを目指す方はもちろんですが、今現在イラストレーターとして食べていけている方も、今後への布石として「イラスト以外に食べていける手段」を確保しておくことを強くおすすめいたします。