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会期は2月4日(日)まで。最終日は激混み必至だと思われますので、早めの来場をおすすめします。




 広告・印刷・出版業界を席巻したデジタル革命(Macによるデジタル入稿が普及し始める「DTP元年」はPower Macintoshが発売になった1994年というのが一般的)以前の、1970年代から1990年代に活躍した世界的に有名な日本人イラストレーターといえば、アース・ウィンド&ファイアーやELO(エレクトリック・ライト・オーケストラ)のレコードジャケットで有名な「長岡秀星」、セクシーロボットで一斉を風靡した「空山 基」、そしてこの「生頼範義」のお三方だと言えると思います。その中でも圧倒的な画力で、かのジョージ・ルーカスが「『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』のポスターイラストに採用したい」と言わしめた日本が世界に誇るイラストレーター、それが生頼範義(おおらい のりよし)氏です。

 貴重な原画や下書きを含め、展示総数248点という圧倒的なボリュームは、じっくりと時間をかけて観て回りたいものですが、日曜日ということもあってかなりの来場者がありました。生頼氏が活躍した年代を考えると客層はやはり高めでしたが、若い方やカップルもちらほらと来場していたようです。私が個人的にぜひ観たかったのは、件の『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』のポスターイラスト、広告業界で話題になったタバコ『HOPE MY WAY』の広告イラスト、そして月刊OUTで有名なみのり書房が発刊した『MACROSS PERFECT MEMORY』の付録ポスターの原画です。どれもとても素晴らしく、筆致や絵具の盛り具合まで存分に堪能してきました。画材は「リキテックス+クレセントボード」という組み合わせが多かったのですが、それよりも興味深かったのは下絵から本番(ホンチャン)へと移る際、当時多くのイラストレーターが採用していたトレーシングペーパーを使ってトレースするという方法ではなく、下絵とキャンバスに方眼を引くという方法で下絵を写し取っていたことです。またアトリエの写真の紹介がありましたが、キャンバスを立てて描く描き方は(イラストレーターの多くはキャンバスを寝かせて描きます)まさに「画家」の方法論です。そして展示の最後に「オリジナル作品」と題して、仕事ではなく自身の大作として描かれた作品(油絵)が展示されていましたが、やはり生頼氏は「イラストレーター」ではなく本来は「画家」だったんだな、という思いを強くしました。その鬱屈した心情は「生活者としての絵描き(イラストレーター)は肉体労働者(社会の底辺にいる日銭を稼ぐ労働者)にほかならぬ。」という言葉が物語っています。「画家」としてではなく「イラストレーター」として評価されている現状に、忸怩たる思いがあったであろうことは想像に難くありません。

 よく生頼氏のイラストは「リアル」と評されますが、そんな薄っぺらい言葉では表現しきれないほどの「リアリティ」と「熱量」が観るものを圧倒します。氏はクライアントから与えられた資料を基にしつつも自由な発想で描くことを条件に仕事を引き受けていたそうです(ご本人はクライアントの意図から逸脱していないと語っていらしゃいますが)が、その「独自解釈」(今風の言葉で言えば「二次創作」)がこのパワーを生んでいたのでしょう。1994年のデジタル革命以降、長らく続いた不況の時代を経た現在、「リアルなイラストならPhotoshop合成でいいじゃない」「クライアントの要請が何よりも優先するので修正対応は必須」という風潮が蔓延し、生頼氏のような「リアル系イラストレーター作家」の仕事を奪ってしまいました。それを「時代の流れ」と諦観するのは簡単ですが、なんとも寂しい時代になってしまったものです。

 現在のデジ絵師にもぜひ観ていただきたい展覧会ですが、描き方が全く異なる現在のデジタルイラストで参考になる点があるかと問われれば、いわゆる「厚塗り」で多少参考になる程度でしかないとは思います。ですがデッサン力や描写力など、デジタルでも必須と言われる「画力」の凄さは伝わると思います。会期も残り少なくなってしまいましたが、ぜひ足を運んでみてください。

 余談ですが、私は生頼氏の素晴らしいイラストに心躍らせて『復活の日』や『198x年』を観に行き、大いに失望したと言う思い出があります(笑)。つまり今でいう「予告編詐欺」みたいなものですね。それぐらい氏のイラストは「魅力的なパワーに溢れていた」ということなんですが、その「なんだかすごそう」「言いようのないワクワク感」をもたらしてくれた生頼氏には感謝の言葉しかありません。逝去の報に接した時はひとつの時代の終わりを強く感じました。氏のイラスト原画は行方不明なものも数多いと聞きます。ひとつでも多くの作品が見つかることを期待しております。


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