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ペンタブレットの代表的なメーカー、ワコムのCTL-490 W0を意気揚々と買ったのですが…。

 2016年1月、お正月に久しぶりに実家に帰省した私は自室の整理をしていました。そこに見慣れない段ボール箱がひとつ。「おかしいな、なんでこんなところに箱が?」と思って中を開けてみたところ愕然!私が小学校時代から高校卒業までの間、図画工作の授業で描いた絵や個人的に描いたイラスト、歌詞(断片だけ)と小説のアイデアを書きなぐった落書きだらけの創作ノート、生徒手帳や連絡ノート、通知表、アニメ雑誌や映画雑誌の切り抜きなど、いわゆる「黒歴史」が詰まっていたのです!恐る恐る親に訊いてみたところ「机の中にあったものを適当に整理した」「かなり昔にやったので、中身は覚えていない」ということでした。まあ、本当に覚えていないのかどうかはともかくとして、こうして取っておいてくれたのは感謝の極み。たとえ「黒歴史」であっても、失ってしまえば永遠に元には戻りませんからね。

 そんなこんなで、昔の未熟なイラスト(ペン入れをし、トーンも貼っている)を見ているうちに、「今、本気でイラストを描いたらどれだけ描けるだろうか」「もし描くならスミ入れや絵の具と格闘しなくていいデジタルイラストがやりたい」という思いがふつふつと湧き上がってくるのを感じていました。東京に戻った私は、早速デジタルイラストに必要なものを揃えようと行動を起こし、MacやPhotoShopはすでに所有していることから、初心者向けと勧められたペンタブレット(いわゆる板タブ)の代表的メーカーであるワコムのCTL-490を購入し、意気揚々とイラストを描き始めたのです。

 しかし、ほんの10分ほど使っただけで感じる「まともに線さえ引けない、やばい」という焦り、そして1時間以上も使い続けたのに「頑張れば使いこなせるようになると感じる気配さえない」という、現実を突きつけられた時の絶望感。その感覚は今でも体に残っているくらいの衝撃でした。私のこの時の画力は、高校生の頃にいわゆる「オリジナルキャラ」を描いていて、上手いわけでもないが、全くの初心者というわけでもなく、また、仕事柄ちょっとしたカットイラストなら描いていたので、「ペンタブにさえ慣れれば、デジタルでもイラストが思うように描けるぞ」と甘く考えていたのです。ところが結果はこの通り「惨敗」と言っていいくらいの体たらく。思い余った私は、思わず某掲示板に助けを求めたのです。

 そこでは「ペンタブがダメなら液晶タブレット(液タブ)」「MacユーザーならiPad Pro+Apple Pencil一択でしょう」という声ばかり。もちろんそんなことは百も承知で、いくらイラストを描いた経験があったとしても、いきなり10万円オーバーの投資は現実的には不可能です。そうしている内に「タブレット端末にイラストアプリをインストールして、タッチペンで描くという方法があるよ」と教えてくれた方がいらっしゃいました。私はiPhoneユーザーですが、ヘビーユーザーではないためアプリの情報には疎く、その時までイラストアプリがどれだけ充実しているか気にしたことはなかったのです。

 早速私はiPhoneに初心者でも使いやすそうな「アイビスペイント」をインストール。100均でタッチペンを買ってきて、試しにイラストを描いてみました。ペン先が7mmもあるタッチペンで、画面の小さいiPhoneで絵を描くのは少々大変でしたが、ペン先から線が引かれることに純粋に感動を覚えました。なぜならペンタブでは絶対に味わえなかった感覚だったからです。これなら画面の大きいiPadであれば問題なくイラストを描けると判断した私は、中古で初代iPad miniを購入し現在に至ります。使い道のなくなったワコムのペンタブは、とっととオクで売っぱらってしまいました。もちろん使いこなせなかった私が悪く、ワコムにもペンタブにも全く罪はないことは言うまでもありません。

 しかし、繰り返しになりますが、ペンタブを触った時の「頑張れば使いこなせるようになると感じる気配さえない」という感覚、これはなかなか忘れられないでしょう。もし私と同じ経験をして、ペンタブの難しさゆえにデジタルイラストを諦めた方がいらっしゃいましたら、「タブレット端末+タッチペン」という選択肢もあるよ、と声を大にして教えてあげたいですね。