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TOKIA地下1階にある『インデアンカレー 東京丸の内店』。

 私は一時期関西に住んでいたことがあったのですが、そこで出会ったこの『インデアンカレー』は、とにかく「衝撃的」でした。

 まず、カレーに生卵を落としてかき混ぜて食べるというスタイル。その常人の理解を超えた組み合わせにまず衝撃を受けますが、生卵とカレーのルーとごはんがぐちゃぐちゃになった姿はとても食欲をそそるものではありません。カレーという料理はただでさえ「食べ方」「皿の汚れ方」が美しくない料理です。それをさらにぐちゃぐちゃにするなんて、不愉快にさえ感じます。

 次にその味です。まずひとくち口にすると、ほんのりとフルーティーな甘さが口いっぱいに広がります。こちらとしてはその色から、そしてその『インデアンカレー』なる店名から辛さを覚悟しているのですが、その意表をついた「甘さ」にまず味覚が混乱します。ですが、しばらくすると口の中全体がヒリヒリとしてきます。そうです、辛さが時間差であとからやってくるのです。しかもそのタイミングも甘さに慣れた頃という絶妙さ。「見た目辛そうだな→あれっ、甘いぞ→甘口カレーなんだ→いや、辛くなってきた、気のせいか?→えええっ!やっぱり辛いじゃん!」という味覚混乱コンボ攻撃に、美味しいか美味しくないのかの判断をする心の余裕さえも奪ってしまいます。

 では箸休め(スプーン休め?)にとキャベツのピクルスに手を伸ばします。「キャベツ?ピクルス?福神漬けでもらっきょでもなくて?ピクルスってきゅうりじゃないの?」などという疑問に答えを出す暇もないほどカレーで味覚は混乱しています。ですがこのピクルス、箸休めどころかその混乱に輪をかけるように甘く、そして酸っぱいのです。もうこれで私の味覚中枢は正常な判断を下せなくなってしまいました。

 とりあえず完食し、そそくさと外に出ても、その甘辛さは口の中に残ったままです。そしてこう思ったのです「いったいこのカレーは美味しかったのか?美味しくなかったのか?どっちだったのか?」と。そんな困惑と混迷と謎を残したまま、満足そうな笑みを浮かべる大阪の友人たちと共に店を立ち去ることになったのです。

 その『インデアンカレー』、東京では東京駅丸の内口にあるKitteの南側、TOKIA地下1階で味わうことができることを、つい最近たまたまこの場所を通りかかって知りました。大阪の堂島地下センターで初めて味わって以来、約30年ぶりの再会です。一緒にいた妻はもちろん初体験。その妻のリアクションは私の大阪での初体験を見事にトレースしてくれました。

 『インデアンカレー』。その不思議な味の魅力を一度味わって見てはいかがでしょうか。