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 私には仕事でよくご一緒させていただいているライターの方いて、その方は元アニメ業界にいらっしゃった方なのですが、その方が言うには「私がいた頃は女性は珍しく、セクハラなんて当たり前だった」「男社会で徹夜ばかり。とにかくみんな汚かった」そうです(笑)。時代は1970年代〜1980年代ですので、ちょうどアニメブームの頃ですね。その後、1980年代後半ぐらいから女性の活躍が目立つようになってきて、キャラクターデザインや作画監督という要職に女性が就くようになりました。その代表格が高田明美さんと、そしてこの、いのまたむつみさんだと思います。

 いのまたさんのお名前を初めて認識したのは『幻夢戦記レダ』のキャラクターデザインでした。その女性らしい、可愛らしいデザインに一目惚れしたのですが、この頃からアニメから離れてしまったので、その後のご活躍はよく存じ上げていませんでした。今回この展覧会で、「ああ、この作品にも参加されていたのか」と知ることになったのですが、その作品自体はよく知らないものの、展示されている原画の数々で筆致までつぶさに見ることができ、感動的でした。それにやっぱり今見てもキャラクターデザインが可愛い(笑)。

 私は1990年代に流行した、輪郭が尖った感じのキャラデザが苦手(はっきり言うと嫌い)で、同時に「萌え」という言葉も定着しつつあり、どうしてこのキャラデザで萌えるのかさっぱり理解できませんでした。アニメ自体にも興味をなくしており、「気持ち悪い」とさえ思っていたものです。その流れが変わるのが2000年代に入ってからで、ある意味原点回帰というか、女性らしい、丸っこくて優しい印象のキャラデザが増えてきました。これなら萌えるのも理解できます。その原点回帰の「原点」のお一人がこの、いのまたむつみさんであることは間違いないでしょう。

 この『いのまたむつみ展』での『幻夢戦記レダ』の展示はほんの少しでしたが、原画が数多く展示されており、満足度は高いものでした。それに当時姉が夢中になって観ていていて、こちらに伺うまでその存在をすっかり忘れていた、ある意味「迷」作の『宇宙戦士バルディオス』に再開できて嬉しかったですね。