Apple_Pro_Keyboard
カッコは良いけどそれだけじゃあね・・・。

 Apple Pro MouseやApple Pro Keyboardに共通するコンセプトは「透明感」。とにかくこの頃(2000年代前半)のAppleはこの「透明」にやたらこだわっていたのですが、素材が硬性に難があるアクリルだったためにこんな悲劇に見舞われてしまったことを以前記事にしました。ですがそれはモニタだけに限らず、ユーザーにとって一番身近なインターフェイスであるマウスとキーボードにも及んでいたのです。

 この透明パーツと不透明パーツを組み合わせは、一見するととっても「オシャレ」で「モダン」なデザインに見えますが、長期間使っているとクリアな内部にホコリが侵入してくる代物でした。パーツははめ込み式とネジ止めで組み立てられているのですが、その組み合わさったわずかな隙間からホコリが入ってきて、その美しい外観を台無しにしまうのです。では掃除しようと分解を試みるのですが、ネジをシールで隠してあったりとなかなか一筋縄ではいきません。あげくに一度分解してしまうとさらにホコリが侵入しやすくなってしまうという悪循環。その美しさゆえにホコリという汚れが目立ってしまうという皮肉な結果を、ユーザーは甘受するしかなかったのです。

 1996年にジョブズがAppleに復帰し、デザインはそれまでのベージュ筐体から様変わり。まずは半透明でカラフルな「トランスルーセント」、次に透明アクリルパーツを多用した「クリアデザイン」、それから現在へと続く「アルミデザイン」へと変わってゆくのですが、とにかくこの「クリアデザイン」時代は「見た目は良いが使い勝手は最悪」のオンパレード。さすがのMacファンも「見かけよりもっと実用性に重きを置いて欲しい」と心の底から思っておりました。当のAppleも素材としてのアクリルはもう無理だと判断したのか、2003年にPowerMac G5とPowerBook G4で初めてアルミニウム筐体を採用し、現在へと続くアルミ時代をスタートさせたのです。

 それからは硬性も耐久性もメンテナンス性もアップし、こういったトラブルは激減しましたが、例の「Power Mac G4 Cube」に代表されるこの頃のジョブズの「透明」に対するこだわりっぷりにユーザーはただただ振り回されるだけでした。そんなジョブズの「イタさ」を知っている古参ユーザーにとって、現在のジョブズの盛りすぎな神格化には、もう笑っちゃうしかないですね。