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ベジェ曲線の扱いやすさは特筆ものです。さすが老舗のAdobeと言うべきか。

 Adobeは昨年のiPad版Photoshopに続いて、予告通りiPad版Illustrator(通称イラレ)をリリースしました。PC版に慣れていると機能は圧倒的に少ないですが、それでも最低限は揃っているので、簡単なイラストやロゴ制作、デザインパーツ制作ぐらいには使えそうです。特にベジェ曲線の扱いやすさは素晴らしいですね。Apple Pencilで画面をなぞると、それなりに美しいベジェ曲線が引けるのには驚きました。

 ですが、現実問題としてPC版ユーザーがiPad版を使うメリットってあまりない気がします。特にデザイナーが印刷入稿データを作成するような用途には全く使えませんし、想定もしていないでしょう。このiPad版はPC版と連携して使うべきものだと思います。また、私のようにイラレで緻密にイラストを描きたいと思っている人にもメリットは薄いかも。イラレは「オブジェクト(図形)の面と線にそれぞれ属性を指定し、それを大量に組み合わせて絵を描く」というアプリケーションです。つまり、面と線にどれだけ自由な属性を施せる機能があるのかが、描くイラストの作業効率や完成度に直結します。現状、PC版イラレが「10」とすれば、iPad版イラレは「1」程度。さらなる機能アップやiPad版独自の進化を期待したいところです。

 そんな、まだ基本機能しかないiPad版イラレですが、おすすめするとしたら以下のユーザーだと思います。

(1)PC版イラレでペンタブを使ってイラストを描いていたユーザー

(2)PC版イラレが高くて手が出せなかったアマチュアユーザー


(1)に該当する方が一番喜んでいるかもしれません。PCやペンタブの呪縛から離れてiPadでイラレイラストが描けますからね。(2)については、私はずっと「廉価版イラレを出すべき」と言い続けていました。そういう意味でこのiPad版イラレは福音だと思います。iPadの購入が前提になりますが、PCを買うより安価ですし、中古という選択肢もあります。この機会に、ぜひ多くのアマチュア絵師さんにイラレを触っていただけたらな、と思います。

 逆に向かないユーザーは

(3)デザイナーになりたくてデザインの勉強をしているユーザー

(4)プロのデザイナー


でしょうか。(3)はiPad版を覚える前にPC版のイラレを覚える必要があります。iPad版のテキスト機能はオマケ程度なので、本格的なデザインやレイアウトの作成はできません。配置する画像の取り扱いや、デザインで多用するドロップシャドウや光彩が未搭載です。ですので(4)も当然向いていません。私も仕事でiPad版イラレを使うことは・・・まあ(ほとんど)ないでしょう。

 と、いうわけで、俗にAdobe税と言われるサブスクリプションを払っているユーザーなら無料ですのでインストールしておいてもいいと思います。その反面、アマチュアユーザーが月額1,080円を払うメリットがあるかどうかは微妙なところですが、イラストでお金を稼ぎたいと思うのなら、イラレデータでの入稿は必須になりますので、イラレの扱いに慣れておくという意味はあると思います。本当はサブスクではなく買取にして欲しかったのですが、iPad版Photoshopもサブスクだったので期待はしていませんでした。まあ天下のAdobe様ですからね。それはないでしょう。

 今後、スケッチをベクターに変換、精度を向上、可変線幅のストローク(これは初めから搭載しておくべき機能)、新しいブラシ、ドロップシャドウ、その他の効果などが追加されるそうです。とりあえず期待はしておきます。