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アナログデザイナー時代に私が使っていた仕事道具の一部。全部知っている人は相当のベテランです。

 私が最初に入ったデザイン会社(仮にA社とします)で2年が過ぎ、3年目になって新入社員が入社してきました。その新入社員のN君は、美術系大学を卒業してからの入社だったので、(2年制)専門学校卒の私とは同い年ということになります。デザイナー3年目というと一通り仕事にも慣れ、そろそろ簡単な案件なら担当させてもらえる時期です。私もその例に漏れず、仕事の担当者としてクライアントと直接打ち合わせするなどしていました。その一方でN君の面倒を見ろと言われまして、まあ自分もまだ新人のようなものだし、同じように学びあっていけばいいやぐらいにしか思っていなかったのです。

 ですが私の方からはそうであっても、同い年なのに「さんづけ」で呼ばなきゃならないし、仕事も教えてもらわなきゃ自分だけじゃ何ひとつできないN君にとって、それはなかなか屈辱的であったのでしょう。N君から飲みに誘われた席で、私の目の前で「こんなことならもっと早く業界に入るべきだった・・・」と悔し涙を流されたのには少々驚きました。その時の感想は「そんなこと俺に言われても・・・」だったし、私自身はN君をそれなりにリスペクトしていたつもりでした。高校時代、あらゆる学業を放棄(まあ授業を欠席しない、テストは受けるなど最低限のことはしましたけど)し、自分の好きなことしかしなかったあげく、無試験の専門学校を選んだ私にとって、受験勉強をし、大学受験をし、合格したというだけでリスペクトの対象になるのです。

 でもそんなことはN君にとって関係ありません。今現在彼の置かれた立場は「2年遅れ」という現実です。これを巻き返すためにどう頑張るかは本人次第です。以前書いた「地下鉄有楽町駅の地下通路で声をかけてきた、デザイナー志望の若い新入社員の女性のお話と、デザイン・イラスト業界の現実」という記事で「業界に入るなら早ければ早いほうがいい」としたのは、この経験があったからですが、それから1年後、私はA社を退社し、N君とは離れてしまいました。私がA社を辞めた理由は、もっとレベルの高い仕事がしたくなったためですが、それから5年後にN君と再会し、こんどは案件発注者(N君)と受注者(私)という立場になります。それについてはまた後日記事にしたいと思います。