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 店舗にもよりますし、時間帯にもよるかと思うのですが、ダイソーで買い物をしていると「♪ハッピー プライス パラダイス、ダイソー!」という曲が突然始まることがあります。私はこの曲が大嫌いなので、手に取った商品も商品棚に戻し、一目散に店から逃げ出します。もう「嫌い」というレベルではなく「生理的嫌悪感を催すレベル」で、それはつまり「吐き気を催す」からです。

 その原因はこの曲の単調さにあります。楽曲制作をしている方はよくご存知かと思いますが、この曲はいわゆる「3コード(3和音)」でできています。3コードとは楽曲を構成する和音が3つしかないという意味で、その3つのコードも和音の基本中の基本「トニック(E)、ドミナント(B)、サブドミナント(A)」を使用している場合を指します。ここは音楽理論を語る場ではないので、詳しい説明は省きますが(実は理論は苦手)、算数で言えば「1たす1は2」くらいの基本中の基本の話です。『ハッピー プライス パラダイス』は延々とこの3コードを繰り返す(E→A→B)だけ(正確には途中で少し変化します)です。算数に例えるならば「1たす1は?の問題を解きなさい」と延々と、無限に出題されているようなものです。つまり「基本中の基本を延々と繰り返えしさせられる(聴かされる)」のです。

 実はこの3コード、ブルースでよく使われます。ブルースも同じコード進行を延々と繰り返す音楽ですが、ブルースが音楽として楽しめるのは「繰り返す同じコード進行の上に乗っているメロディや歌詞がバラエティ豊か」だからです。それはヒッピホップも同じで「繰り返す同じビートの上に乗るリリックがバラエティ豊か」だから音楽として聴けるのです。ですがこの『ハッピー プライス パラダイス』は、基本の3コードを延々繰り返す上に、歌詞もメロディも延々同じものを繰り返します(正確には途中で歌詞もメロディも少しだけ変化します)。わかりやすく言えば「1たす1は?の問題を2と回答し、よくできたね!と先生に褒められる」ということを延々に繰り返すぐらい狂気に満ちている状況です(うまく伝わるでしょうか・・・)。

 さらにさらにこの曲はトドメを刺すかのように、「ダイソー!」という調子っぱずれの「合いの手」が入ります。算数の例にたとえると「1たす1は?の問題を2と回答し、よくできたね!と先生に褒められ、がんばれ〜!とパパから声が掛かる」ということを延々に繰り返すようなものです。いかがでしょうか。いかにこの曲が「狂気に満ちている」か、おわかりいただけましたでしょうか?

 この曲に比べたら『キャンドゥマーチ』なんて気分が明るくなるし、『セリアの歌』なんて高原にいるかのごとく爽やかな気分になります。この『ハッピー プライス パラダイス』を聴いて、楽しい気分になる方もいらっしゃるかも知れませんが、私にとってこの曲は「新興宗教の洗脳ソングを思わせる狂気に満ちた曲」です。古い話ですがオ●ム真理教の「♪ショーコショーコショーコー」を思い出した方もいらっしゃるのではないでしょうか(まだオ●ムの曲の方がマシだと思えるレベル)。

 ダイソーがこの曲を店内で流す目的はこの「洗脳」(「洗脳」が不適切なら「強烈な印象付け」)にあるのは明白です。3コードは「次のメロディを予測しやすい」という特徴があります。つまり初めて聴くメロディでも「♪たらりら〜」とくれば「♪たらりらら〜」と来るな、と予測しやすいのです。予測しやすいということはすなわち覚えやすい、印象に残りやすいということです。そんなコード進行に単調なメロディと単調な歌詞が乗り、それを延々と繰り返すのです。これを「洗脳目的」と言わずしてなんと言うのでしょう?

 広告において「強印象」と「悪印象」は紙一重の世界です。その怖さをしらない素人担当者や決裁者が、斜め上の方向に張り切ればこうなるという好個の例だと思います。ダイソーは一刻も早くこんな「狂気の洗脳曲」の使用を止め、通常のBGMを低音量(BGMがうるさい店舗もある)で流すようにしてほしいものです。