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photo:pixabay

 アクアリウム愛好家にとって、熱帯魚はもちろん鯉や金魚を自然の川や池、湖に放流することは生態系の破壊につながりかねす、絶対してはならないことなど常識中の常識ですが、この『池の水を全部抜く』オンエア以前は「普通に」行われていたイベントでした。しかも何も知らない無垢な子供たちを動員して。

 最近ではこの例

 三重県伊勢市内の勢田川の支流で、住民有志のグループがコイ約200匹を放流したと地元テレビ局が報じ、専門家らから懸念の声が出ている。

〈中略〉

同市の農林水産課が16日の取材に答えたところによると、コイを放流したグループは、地域の共同活動を支援する農水省の多面的機能支払交付金事業から補助金を受けている。

三重県の外郭団体である同県土地改良事業団体連合会がこの事業の事務局をしており、そのサイトでグループの活動が紹介されていた。

それによると、このグループは、17年10月作成の紹介文で、地域のお祭り行事の一環として、子供たちと共にニシキゴイ200匹を今回と同じ川に放流し、その後のコイの世話や成長観察を続けているとしていた。

〈以下略〉

(引用:「コイ200匹を川に放流」地域活動に疑問噴出 市も懸念「外来種持ち込みならよくない


 この記事は2022年3月16日にJ-CASTニュースに掲載されたものですが、もちろんこんなことは言語道断、わざわざ生態系の破壊を助長するようなイベントをする意味はありません。以前山梨県の荒川でも同様のイベントが批判されましたが、全く懲りていないようです。実際問題として生態系の破壊につながるか、つがならないのか、もしくはその証拠があるのかという議論はあるかと思います。ですが「環境に悪影響がある可能性がある」イベントを、「環境を守る」こと標榜している団体が行うこと自体が矛盾しており、欺瞞に満ちています。

 どうしてこんなことが繰り返されるのか?考えられる「裏側の事情」は大きく2つ考えられます。

(1)NPO団体として国の補助金が何としてでも欲しいので、その活動実績のアピールとして

(2)地元の養殖業者の癒着し、余った魚の引受先として


どちらもありそうな話ですし、とても胡散臭い話です。

 さて、テレビ番組『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』は2017年1月15日が初オンエアです。私はこの番組は放送開始当時から視聴していますが、始まったばかりの頃はここまで人気番組になるとは思っていませんでした。それ以降はこの番組が啓蒙となり「観賞魚を自然の川や池、湖に放流することは生態系の破壊につながる可能性がある」という「常識」が広く世間に浸透しました。それだけでも『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』という番組が制作・放送された意義は大きいと感じます。もちろん一部で捕獲した生体の取り扱いや、外来種=害悪というステレオタイプ過ぎるレッテル貼りについて批判があることは重々承知ですが(そのことは私もオンエア当初から感じていたことではあります)。それを差し引いてもこの番組の啓蒙的価値を考えれば、いちアクアリストとしては感謝の念しかありません。本当に良い番組を作っていただいたと思っております。

 一方のNPO団体とは、本来「その問題に対して専門知識を動員して解決を図る非営利団体」のことです。ですが、これだけ批判されている放流イベントを強行する団体の実態は、「川の生態系を破壊する可能性も厭わず、補助金の獲得と観賞魚業者との癒着が疑われる団体」と考えてよいでしょう。こんな団体に関わりを持つメリットはありませんし、子供を参加させる意義などありません。距離を置くことをおすすめいたします。



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