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photo:写真AC

 最近SNSなどで「最低同じ会社で3年頑張れと言われるけど、そんなの意味ないから辛かったら辞めればいい」という新入社員側の立場に立った投稿をよく見かけます。また、「そんな考えは古い。3年というキャリア日数に根拠などないし、その新入社員の個性に合わせたキャリア育成を考えるべき」という人材育成側からも否定的な意見を聞きます。それはそれで正しい意見だとは思いますが、それでも私はあえて「最低でもその会社で3年は頑張るべき」と考えています。それは「社員」の立場でも「上司」の立場でもなく「採用」の立場からそう考えるのです。

 さて、あなたが採用担当者だとして、1年や2年で、ましてや数ヶ月で辞めてしまった若者を採用したいと思うでしょうか?また、複数の応募者があり、1年で前職を辞めた人と3年で辞めた人のどちらを有望と考えるでしょうか?答えは言うまでもありません。3年という年月は、その業界や業務の流れを覚えるのに最低限必要な時間です。3年経てばただ単に上司に言われたまま動くロボットではなく、自分から積極的に動かなければならない場合もある主任クラスになります。主任には当然責任があります。そういった業務上の責任を負いながら仕事をしてきた人の方が、ただの労働ロボットよりも優秀である可能性が高いと判断できます。採用担当者はその人の経歴を一番重視します。経歴に魅力がない人を好んで採用する担当者などいないでしょう。

 まあ、そうは言っても現実はホワイト企業ばかりではありません。ブラック企業などいくらでも存在します。不幸にもそんなブラック企業に就職してしまった場合、「3年頑張れ」などと言うのは酷なことかも知れません。ですがあえて言いますと、そもそもその人は「ブラック企業に採用された」のではなく「ブラック企業にしか採用されなかった」と考えるべきです。世の中、ホワイト企業には優秀な人材が集まるし、ブラック企業にはやはりそれなりな人材が集まるものです。つまり結局のところ「自分が悪い」のです。ホワイト企業に入れなかった自分、ブラック企業と見抜けなかった自分、甘言や勧誘に乗ってしまった自分。その職業を、その企業を選んだ自分が悪いのだし、またそう自覚するべきです。現在の安易な「ブラック企業が悪い」「だから3年頑張るなんて意味ない」という風潮は私は「甘い」と考えています。あえて私は言いたいです「じゃあ自分と合わない業界や会社を、ましてやブラック企業を選んだ自分はどうなのですか?」と。「メタ認知、現実認識、洞察が足らなくはなかったですか?」と。

 実はブラック企業がなくならない理由の一つにブラック人材の存在があります。ブラック企業はブラック人材の受け皿として機能しているという一面があるのです。だからブラック企業は「大して使えない人材だから雑に扱えばいい」とばかりに社員を酷使するのです。そんなブラック企業に捕まりたくないのであれば、自分がホワイト人材になる必要があります。ホワイト人材になれれば例え現在はブラック企業に勤めていたとしても、ホワイト企業から声がかかるはずですし、必ずそのチャンスが訪れるはずです。もしそうならないのであれば「自分はひょっとしてブラック人材ではないか?」と疑ってみることです。それもなく、ただストレス発散をするがごとくブラック企業叩きしたところで事態は好転しません。好転しないどころか自分の不甲斐なさを「こんな世の中が悪いんだ!」とばかりに責任転嫁し、最悪ガソリンで人を巻き込んで放火するような人間になりかねません。負の連鎖ならぬブラックの連鎖はなるべく早く断ち切らねばなりません。だから新入社員時代の3年間は大きな意味があり、その後の人生に多大な影響を及ぼすのです。

 ですので私はあえて言います「3年頑張れ」と。たとえそこがブラック企業だったとしても、そこでの3年の社会人経験、実績は次へのステップに何らかのプラスになるはずです。私ならその3年間に「仕事のノウハウを目一杯吸収し、人脈をがっつり築き、スキルを磨いてから辞めてやる!」と考えます。つまり「転んでもタダでは起きない」というやつです。そのぐらいのしたたかさとタフネスさは新入社員の頃から持っておくべきです。単に「辛いから辞める」ではどこに行っても通用しません。辞めるならその駄賃をしっかりと頂戴してから辞めましょう。そのためにも3年という時間はどうしても必要だと私は考えます。