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 私は業種としてはグラフィック(広告)デザイン、肩書きとしてはグラフィックデザイナー以外の仕事をしたことがりません。そんな私は過去から現在まで「好きなことを仕事にできて羨ましい」と、それこそ数え切れないくらい言われ続けてきました。ですがそう言われるたびに違和感を感じています。その違和感を言語化すると「間違ってはいないけど、微妙に違う」というものです。今回の記事はその「違和感」について説明したいと思います。

 世間ではよく「好きなこと、興味があること、得意なことを仕事にしましょう」と言われます。私はそんな話を聞くたびに内心「何にもわかってないな・・・」と思っています。なぜなら「好きなこと、興味があること、得意なこと」は「嫌いになる、興味をなくす、得意でなくなる」可能性があるからです。その原因はこれらすべてが「感情や環境に大きく依存している感覚」だからです。好きなことがやがて嫌いになるなんてことはよくある話だし、他に興味が移ってしまったり、得意だと思っていたことがもっと得意にしている人を見た瞬間に挫折する、ということもよくあります。では「嫌いになってしまった、興味をなくしてしまった、得意でなくなってしまった」ことを仕事として続けることができるでしょうか? おそらく誰もがその仕事を嫌になり、辞めたくなるでしょう。もし生活がかかっていて辞めることができない立場だったら地獄です。最悪、精神を病んでしまうかもしれません。

 では、「好きなこと、興味があること、得意なこと」ではなく、何を基準に仕事を選べばいいのでしょう?長続きする仕事選びのコツとは何でしょう? 答えは「自分に向いた仕事を選ぶこと」です。つまり「自分の嗜好や性格、精神性を深く分析し、自分の特性を正しく認識。その特性に合った仕事を選ぶ」ということです。「感情や環境に大きく依存している感覚」で選ぶのではなく「自分の本質に合っているもの」で選ぶのです。

 私はデザインの仕事を「好きだから、興味があるから」選んだという側面ももちろんありますが、一番重視したのは「自分に向いているから」です。フリーランスになったのも「組織は自分に向いていないから」です。単に好き嫌いで選んだわけではないのです。もちろん好きや得意が「向いている」場合もあります。ですので「好きなこと、興味があること、得意なことを仕事にしましょう」が絶対的に間違っているわけではないのですが、逆に「好きじゃないこと、興味がないこと、得意でもないこと」が「向いている」場合だってあり得ます。その部分は「好きなこと、興味があること、得意なことを仕事にしましょう」では拾いきれません。つまりその人の可能性の芽を摘んでいることになってしまっているのです。

 では「自分に向いている」とは何なのか?という話ですが、それは客観的で冷静な自己分析ができているか否か、という話になります。洞察力と言い換えてもいいでしょう。自己の深いレベルまで自分を知ることができていなければこの判断はできません。逆に言えば、それができない人ほど「好きなこと、興味があること、得意なことを仕事にしましょう」という安直なワードに共感し、影響されると言えます。つまり「(思考や認識の)底が浅い」ということです。

 私は人生を生きる上で一番必要な能力はこの「自己分析力・洞察力」だと思っています。これさえできていれば自分自身に起因する問題が起こることはありません。この能力は仕事選びはもちろん、配偶者選びにも言えます。自己分析が足らず、自分を見誤って一時的な感情(好き)のみで相手を選び、結果悶々とした日々を送っている夫婦などそこら中に存在します。最近の風潮としてそんな家庭内離婚夫婦は安易に「離婚」という方法を選びますが、自己分析が足らなければ結局同じことを繰り返すだけです。それは仕事選びも同じことが言えます。

 ということで、見出しの「好きなことを仕事にできて羨ましい」とよく言われるけど「違う、そうじゃない」の答えは「私は好きでこの仕事を選んだわけではなく(まあ好きでもあるのですが)自分に向いていると思ったから選んだ」です。その気持ちはデザイナーになって35年以上経た現在でも、全く変わっていません。そう、「自分に向いている仕事」だからこそ、普遍なのです。



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