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さるデザイン・DTP関連の求人広告を目にし、応募したところ面接を設定していただいたので会社訪問したのですが、分厚いメーカーカタログのDTPなのでお断りしました。
まあ、私は何がきっかけで仕事上のお付き合いが始まるかわからないので、営業とか面接にはたとえ無駄足だと思っても、極力お伺いするようにしているのですが、さすがにメーカーカタログのDTPの仕事を受ける気にはなりませんでした。理由は、
(1)単価が安く量をこなさないとお金にならない
(2)デザイン要素がなく、ほとんど「作業」である
(3)アプリ(インデザイン)やフォント(モリサワやフォントワークス)環境の構築に余計なコストがかかる
です。
特に(3)は重要で、現在はモリサワフォントをアンインストール中だし、インデザのサブスクには(現在は)加入していません。つまり、ただでさえ(1)なのに、(3)の経費を追加で払う気になれなかったのです。(2)は単にモチベーションの問題ですが、正直カタログ制作はデザイナーの仕事ではなくDTPオペレーターの仕事の範疇でしょう。
面接していただいた担当者の方からは丁寧に説明していただけたし、その会社自体に悪い印象はなかったのですが、その会社は大手印刷会社のカタログ専門の下請け制作会社であり、紙(冊子)のカタログの将来性も不透明であることも引っかかりました。面接の最後は「カタログ以外の仕事で何かありましたらまたお声かけください」でしたが、おそらく連絡はないでしょう。
ちなみに「デザイン」と「DTP」は混同されがちですが全く別物です。「デザイン」とは文字通り紙面(画面)をデザインすること。「DTP」は割付(指定された要素を指定された範囲に収める)という意味で使われます(主に冊子、俗に「ページ物」と言う)。もちろんDTPにもデザイン要素はあるにはあるのですが、それはディレクターやチーフデザイナーが決めることであって、DTPオペレーターはその指示通りに割付作業をするだけです。ですのでちょっと悪い言い方をすれば「DTPオペ=割付屋さん」ということになります。DTPオペをデザイナーと呼ばないのはそういう理由があるからです。
まあ私はもう既にそこそこの年齢なので、別にデザイナーという肩書きに固執しているわけではなく「割付屋さん」でもいいんですが、それならフリーランスで安く都合よく使われるのではなく、派遣社員として就業時間や就業場所、給料(時給)が固定された就業先を探し、その時間外に副業でデザイナーをする方を選びます。そうすれば固定給は確保できますし(DTPをフリーランスで受けるより割りが良い)、よっぽど儲かります。
単純な話「仕事が面白く業務環境は自由だが、収入は不安定」を選ぶか、「仕事はつまらなく就業環境は拘束されるが、収入は安定」を選ぶかの二択だ、ということです。「仕事はつまらなく、収入が不安定」なんて誰も選びません。その事務所には社員、もしくはアルバイトとおぼしきオペレーターが数多くいらっしゃいましたが、要するにそこで溢れた仕事の受け皿としてフリーランスを安く都合よく使おうと思ったようです。ですが、そんな甘々な発注先の思惑なんぞこちらはとっくにお見通しです。ですので「(単価が高い)カタログDTP以外のお仕事を」という話をしたのですが、まあ発注はないでしょう。
このように、広告業界ではDTPオペはデザイナーよりランクが下、という評価が一般的です。私のような引退一歩手前のデザイナーが片手間にやるならともかく、若いクリエーターが目指すべき職業ではありません。実績としての評価もデザイナーより劣るという現実をよく認識し、経験としてのDTPオペを否定しないまでも、将来が展望できる若さとやる気があるのなら、その上位であるデザイナーやディレクターを目指すべきだと私は思います。だってDTPオペの仕事なんて、私のようなロートルにも「手伝って欲しい」と言われるのですから。