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 2023〜24年の年末年始にかけて『響け!ユーフォニアム』の劇場公開作が一気にOAされました。『劇場版 響け!ユーフォニアム〜北宇治高校吹奏楽部へようこそ〜』『劇場版 響け!ユーフォニアム〜届けたいメロディ〜』『リズと青い鳥』『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』の4作品です。この『響け!…』はTVシリーズの1、2も視聴していますので、それを含めた感想などツラツラと書いていきたいと思います(ただし『リズと青い鳥』は除外。理由は他と比べ異質すぎるから)。

 まあ、初っ端から結論をいいますと「作画は素晴らしいが他はイマイチ。特に登場人物の行動原理や心理が薄っぺらくて萎える」です。その理由を箇条書きにします。

1)小学生みたいなメンタルの高校生

 とにかくキャラの言動がひたすら幼稚。今時高校生にもなってあんなはしゃぎ方する?時折挟み込まれるギャグもまったく笑えなく上滑り。

2)問題発生→解決の原因とプロセスが単純で短絡的

 まるでゲームのイベントのように人間関係の問題が発生するが、いともあっさり解決する。現実の高校生はもっと根深い問題を抱えているし、その解決だって一朝一夕には行かないはず。抱えた悩みもその解決方法も「そんなもの?」でしかなくリアリティがない。

3)まるで昭和のような各キャラの「悩み」

 親の反対で部活が続けられないとか令和の時代には時代錯誤も甚だしい。先輩より上手い後輩という問題も強豪校ならよくある話。その程度でイチイチ揉めてたら全国で戦えない。親や姉妹との確執も「その程度?」だし、特に萎えたのがオーボエの子のトラウマ。こんな安っぽい理由で「できない・無理」などとはならないでは?

 群像劇で登場人物が多いため、各キャラの心理描写を丁寧に描けなかったのかもしれないが、そもそも論として「その程度の理由でそんなに悩む?」「そんな簡単なことであっさり立ち直る?」というイベントが頻出して感情移入できず冷めた目で終始視聴する羽目になってしまいました。まあ、自分が歳を取ったから若者の心理に共感できないだけでは?という声もあるかと思いますが、もし今自分が10代でこのアニメを視聴したとしても、全く同じ感想であったことは断言できます。ただ、随所随所で良いシーンもあるし、主人公の成長もそこそこ描けているので、観ていられなくて視聴を中止するまでには至りませんでした。これは飽きっぽい私にしてみれば画期的(?)で、そういう意味では「まあまあ楽しめた」作品であったことは付記しておきます。

 これはアニメに限りませんが、映画やドラマなどのどのコンテンツでも非常に薄っぺらく単純で短絡的な感情表現や心理描写、行動原理が目につきます。その原因は視聴者の読解力の低下が招いた結果なのか、読解力の低い視聴者に制作者側が迎合した結果なのかはわかりませんが、「読解力の低下」はすなわち「考える力の低下」です。昨今の若い世代のあまりにも短絡的な犯罪(真っ昼間に堂々と強盗するなど)の蔓延は、この「考える力の低下」の帰結のような気がしてなりません。そして悪いことにその傾向はTikTokのような「短絡的コンテンツ」の流行でますます拡大しそうな気配です。良質なコンテンツを子供たちに供給(身近に接する機会を与える)のは私たち大人の責任です。もちろんそうしている大人たちが存在しているのも理解していますが、それをしている・していないの格差は、すなわち知力の格差であり、最終的に収入の格差に行き着くのではないかと危惧しています。知力が劣る大人に育てられた子どもは知力が劣るという負のループ・・・すなわち「親ガチャ失敗」から抜け出す機会を多くするためにも、若い世代に受け入れやすいアニメという媒体での「深い物語」の制作を、制作サイドにはお願いしたいですね。